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組織が有機的に機能するリーダーシップ

組織が有機的に機能するリーダーシップ

2022/10/03

導入

「リーダーシップ」に正解はありません。
検索すればすぐに数多の体系的な研究結果に辿り着けますが、
・結局のところどのようにチームを引っ張ればいいのか分からない
・どのような人材をリーダーに据えればいいのか分からない
といった課題を抱えている方は多いのではないでしょうか。

今回の記事では先人達が残した学術的な研究も踏まえつつ、様々な事業責任者とプロジェクト推進を行っている我々の観点から「現場で求められているリーダーシップ」について改めて深掘りをしていくことで、
ーーーーー
・結局チームを勝たせられるリーダーってどんな人?
・うちの場合にはどういうリーダーが適しているの?
ーーーーー

といった現場の悩みを解決することに焦点を当て「リーダーシップ」の解説をしていきます。

リーダーシップの定義

「リーダーシップ」についての研究は古くから行われており様々な議論が展開されています。ピーター・ドラッカーをはじめ、研究者によってその定義も多岐に渡りますが、一貫して共通しているのが「リーダーシップ」とは「チームを目標達成に導く能力」だということです。

その中でも「リーダーシップ」の構成要素を2つの機能に分類して捉えた「PM理論」の研究が分かりやすいため、下記でご紹介します。

リーダーシップを構成する2つの要素【PM理論】

「PM理論」は日本の心理学者である三隅二不二が提唱したリーダーシップ論です。
「P=目標達成(Performance)」「M=集団維持(Mentenance)」とし、この2つの要素が「リーダーシップ」の構成要素であると定義しています。

P=目標達成機能

「目標達成機能」は「業務を遂行する力」を指し示します。噛み砕くと「THE・仕事ができる人」のイメージです。まずは目標を設定し、計画を立て、仕事を割り振り、指示を出し、メンバー各自が成果を上げられるよう業務管理をするといった機能を指し示します。チームの目標達成は各自に割り振られた目標達成による集大成のようなものなので、チーム全体の業務を確実に遂行していく実務的な機能が「リーダーシップ」の構成要素として必須要件となります。

M=集団維持機能

「集団維持機能」は「メンバーのパフォーマンスを向上させる力」を指し示します。噛み砕くと「THE・面倒見がいい人」のイメージです。例えば、メンバー間での意思疎通を活発化させるためにコミュニケーションの機会を提供したり、業績が芳しくないメンバーがヘルプを出しやすいよう助け舟を送ったりなど、チーム全体を活性化させる機能を指し示します。

仕事ができる(目標達成能力)だけではメンバーがついてきませんし、面倒見がいい(集団維持)だけではチームが勝てません。「リーダーシップ」の要件をこれら二つの領域に区分して捉えることで、自社が強化すべきポイントやチームリーダーを選定するポイントの解像度が上がります。

リーダーの役割【8選】

それではリーダーにおける役割を下記で詳しく見ていきましょう。
できるだけ「現場感のある」リーダーの役割に焦点を当てて紐解いていきますので、一緒に読み進めていただければと思います。

1.目標を設定する

リーダーの仕事は「目標設定」から始まります。ここが第一にして最も重要なポイントです。
「リーダーシップ」の観点から見た「目標設定」において重要なポイントは、

ーーーーー
メンバーが「ワクワクできる」目標設定かどうか
ーーーーー

です。
「目標設定」自体が当然の業務すぎて、「ギリギリ達成できそうな数値をとりあえず設定」して次のステップに進んでしまうと言ったケースが意外にもよく見られます。しかしながら、メンバーが「魅力的だ」と感じられる目標設定ができるか否かは、その後のチームパフォーマンスを何倍にも引き上げられる可能性がある非常に重要な要素です。理由は下記の2点で説明できます。

ーーーーーー
【1】メンバーの自発性を誘発できる
「やらされ仕事」ではなく、自らの意欲を原動力として行う業務はパフォーマンスを上げるだけでなく持続性が高い特徴があり、チーム全体を活性化させる効果も期待できます。

【2】チームのシナジーを誘発できる
メンバー個々人が自発的に目標達成に向かっているチームではコミュニケーションが活発化します。互いに刺激しあい、チーム全体のパフォーマンスが相乗効果で上がっていく可能性があります。
ーーーーーー

「目標設定」を数値化することは大前提ですが、その数値を達成した先にどのような未来が待っているのかを、リーダーが明示できるか否かは「ワクワク」を生み出す重要なポイントです。(「ワクワク」を生み出す目標設定については後ほど詳しく解説します)それはチームの目標達成による社会貢献でも、チームの業績が組織全体に与えるインパクトでも、個人のビジョン達成でも構いません。数値達成の先にある「目的」をまずは明示することが「リーダーシップ」の第一歩です。

2.計画を立てる

次に具体的な計画設計をすることもリーダーの重要な役割です。
目標達成に向けてどのような工程を踏んでいくのか、一つ一つの業務がどのような意味を持つのか、その道筋をメンバーが理解している状態が理想的な状態です。

事業推進計画を策定する大まかな流れは下記となります。

ーーーーー
①目標(KGI)設定
②プロジェクトロードマップ作成
③ゴールに紐づくKPI設計
④WBSの作成
⑤リソースの洗い出し
⑥業務の割り振り
ーーーーー

リーダーシップの切り口から「計画設計」を捉えた際に最も重要なポイントは、

ーーーーーー
分かりやすいこと
ーーーーーー

です。
もちろん「計画設計はざっくりで良い」という意味合いではありません。
ここでのポイントは綿密に練られた事業計画をチームメンバーにどのように落とし込むのかという点です。
分かりやすい事業計画はメンバーのモチベーションを向上させます。「なるほど!これなら勝てる!」とメンバー個々人が奮起している状態を目指し、各メンバーの視座に合わせて伝達する情報粒度をリーダーが調整する必要があります。
「私はここまで詳細に考えているぞ」というリーダーのアピールが、「何だかよく分からないからとりあえず言われたことをやっておこう」というメンバーの受動的な心理状態を生成してしまうケースは陥りがちな落とし穴ですので注意が必要です。

3.仕事を割り振る

計画設計が済んだら、各メンバーに対して仕事の割り振りを行います。
チームとして成果を上げるためには適材適所を見抜いた仕事の割り振りがマストな要件です。

実際の現場で仕事を割り振る際によく発生する課題が、

ーーーーー
メンバーが「得意なこと」と「やりたいこと」のズレにどう対処するか
ーーーーー

です。
チームパフォーマンス最大化の観点からも「得意なこと」に合わせて仕事を割り振ることが前提条件となります。しかし、初めからメンバーの意見を無視した意思決定はメンバーの士気低下のみならずリーダーへの信頼も失いかねません。ここのハンドリング能力が「リーダーシップ」の鍵となります。

重要なポイントは順序です。

ーーーーーー
①当人の意思を尊重した割り振りをする
②客観的な指標を元にフィードバックする
③なぜ他領域の業務を任せたいのか説明する
④試験的に他領域の業務を割り振る
⑤客観的な指標を元にフィードバックする
⑥なぜチームに当人の仕事が必要か説明する
⑦当人に業務選択の意思決定をさせる
( or ⑦リーダーが業務選択の意思決定をする)
→①〜⑦の繰り返し
ーーーーーー

緊急を要する場合は⑦でリーダーが意思決定を行う必要があります。しかし、中長期的なチームの育成という観点ではメンバーの主体性を担保することが重要です。自分の得意な領域で本領を発揮することはメンバーにとっても重要な要素ですので、各メンバーが最大限の力を発揮できるよう日頃から信頼関係を構築しておくことがリーダーに求められる役割だと言えます。

4.動機付けをする

「リーダーシップ」において重要な要素となるのがメンバーの「動機付け」です。
「動機付けができている状態」とは「自発的かつ積極的にメンバーが仕事に取り組んでいる状態」を意味し、チーム全体の推進力を大きく左右する最も重大な要素です。その鍵を握っているのは間違いなく「リーダー」の存在であると言えます。

では、メンバーのやる気を引き出すことができるリーダーに共通しているポイントとは一体何でしょうか?
ポイントは下記の2点です。

ーーーーーー
①リーダーがメンバーと同じ目線で目標を追いかけている

②目標達成のためにチーム内でリーダーが最も奮闘している
ーーーーーー

ここで①と②の共通点に着目してみてください。
①も②も「メンバー」に何かをするのではなく「リーダー」が目標達成に向けて行動しているだけであるということがお分かり頂けると思います。これが「動機付け」における最も重要なポイントです。

メンバーのモチベーションを高めるためには、「リーダー」→「メンバー」のベクトルでメンバーを操作しようとすると逆効果になります。そうではなく、「リーダー・メンバー」→「目標」のベクトルで目標達成にひたむきに、ひたむきに、リーダーが取り組むことでメンバーは「私も本気でやってみよう」とモチベーションに火がつきます。

6.仕事を評価する

メンバーの仕事を「適切に評価する」こともリーダーに求められる重要な要素になります。
仕事の「適切な評価」ができなければメンバーに対するあらゆるマネジメントが見当違いなものになってしまうからです。仕事を適切に評価するポイントは、

ーーーーー
「定量的な指標」に基づいて仕事を評価すること
ーーーーー

です。
定性的に評価してしまう例としては「目標数字は未達だが、自身の苦手を克服しようと奮闘しているため評価レベルを一つ上げる」といったようなケースが挙げられます。これは「結果」ではなく「プロセス」に重きを置いて評価してしまう事例だと言い換えることもできます。
一見、メンバーのことをよく観察した素晴らしい評価判断に見えますが、定性的な評価の一体何が問題なのでしょうか?それは、

ーーーーーー
「定性的な評価」は「目標達成」に紐づかない評価につながってしまうこと
ーーーーーー

です。
ここでのポイントは、「仕事の評価=目標達成機能(P)」と「モチベーション管理=集団維持機能(M)」””リーダーシップを構成する2つの要素【PM理論】“”を明確に区別してマネジメントに当たることです。
目標未達なメンバーに対して結果に紐づかない評価をつけることはチームの目標達成につながりません。それどころか、良かれと思ってつけた評価が逆にチームメンバーからの不信感を引き起こす原因にもなり得ます。
このような状態に陥らないためにも、日頃からP機能とM機能を行使する局面を混同してしまわないよう注意することが必要です。

7.仕事を管理する

次に、リーダーにおける重要な役割がメンバーの業務管理です。
メンバー個々人に割り振った目標数値を各自が達成できるよう、現状分析と軌道修正が必要になります。
この点を「リーダーシップ」の観点でみた際に重要となるポイントは、

ーーーーーー
客観的な事実に基づいて軌道修正を行うこと
ーーーーーー

です。
特に軌道修正の際には「主観的な想像や感覚」でメンバーにマネジメントしてしまうケースが発生しやすいポイントです。主観的な現状分析、軌道修正は目標達成からベクトルをズレさせてしまう要因となり得ます。下記で、感覚ベース・事実ベースでのマネジメント例を見てみましょう。

ーーーーー
【BtoCのPC販売におけるセールス担当が抱える問題点】

問題点:目標受注数が未達

〜現状分析〜
・課題=顧客にベネフィットの訴求ができていない場合
感覚ベースのマネジメント:会話中にお客さんの表情を全然見ていない
事実ベースのマネジメント:PCがサクサク動かなくて困っているという顧客(リテラシーが高くない方)に、カタログスペックばかりを話しすぎ。

〜軌道修正〜
・対策=顧客にベネフィットの訴求をする場合
感覚ベースのマネジメント:もっとお客さんの表情を見て話しなさい
事実ベースのマネジメント:どのくらいサクサク使えるようになるのかを、
使用感について実機を見せたりしながら話しなさい。
ーーーーー

このように個人の感覚や想像ベースでのマネジメントは、適切な指示だしができなくなる可能性が高まります。現状分析や軌道修正を行う際は、具体的に何が課題で、どうすれば課題が解決されるのか、客観的な事実に基づいたマネジメントを心がけましょう。

8.自らが模範となる

最後に、リーダーに求められる大きな役割が「自らが模範となる」ことです。

言うまでもないことですが、「言っていることとやっていることが違う」リーダーに、ついていきたいと思う人はいません。常にメンバーから見られているという意識を持ち、チームメンバーに指摘したことは自身が率先して体現する必要があります。ただ、ここで注意しておきたいポイントは、

ーーーーーー
「リーダー = 完璧な人間」は間違いである
ーーーーーー

という点です。リーダーを任されたことがある人であれば一度は陥ったことがあるポイントだと思います。大切なのは、リーダー自身が日頃から大切にしているチームとしての価値観を率先して体現すること、そして目標達成に対するあくなき貪欲さを忘れないことです。「あの人は完璧だから」という理由で多くのメンバーはついてきません。むしろできないことはできないと認め、周囲をどんどん巻き込みながら事業の推進ができる人材は「リーダーシップ」がある人材です。

リーダーに必要な要素【8選】

1.目標設定能力

まず初めに「目標設定能力」です。上記の項目で「ワクワクできる目標設定」が必要であると述べました。
では、実際にどのような目標が「ワクワクできる目標」だと言えるのでしょうか?目標に魅力を感じるか否かには個人差がありますが、重要なポイントがいくつかあるので下記に5点ご紹介します。

ーーーーーー
▼ワクワクできる目標設定の特徴
①リーダーが情熱を持っている
②革新性がある
③明確な存在意義がある
④周囲へのインパクトが大きい
⑤大きなリターンが見込める
ーーーーーー

【①リーダーが情熱を持っている】
この要素が「ワクワク」を生み出す最も重要な要素であると断言します。その他の要素全てが欠けていたとしても、リーダー自身が圧倒的な情熱を注いで邁進しているだけで周囲のメンバーが勝手に「ワクワク」し出すというケースはよくあります。これはリーダーの熱量がメンバーに伝播した結果です。

【②革新性がある】
二つ目の要素は革新性です。「まだ誰も知らない価値」には人を「ワクワク」させる力があります。ベンチャー企業やスタートアップ企業特有の「熱量」はこの「革新性」に突き動かされていることが多いです。

【③明確な存在意義がある】
NGOやNPOを思い浮かべると分かりやすいかと思います。解決困難な社会問題や環境問題の解決に少しでも寄与したいという欲求は人を突き動かす一つの要因になります。このようなモチベーションは外的要因(市場動向、評価、報酬、など)ではなく内的要因(過去体験、興味、関心、意欲、など)に基づくため持続性が高く、他の要素と比べて安定感があることが特徴です。

【④周囲へのインパクトが大きい】
これは市場に対してのインパクトに限りません。例えば「チームの目標達成が所属している組織の今後を左右する」など、チームから見たあらゆるステークホルダーへのインパクトが目標達成の魅力度を向上させる要因となるケースがあります。

【⑤大きなリターンが見込める】
最後に大きなリターンが見込める点です。目標達成によって個人に跳ね返ってくるリターンが大きければ大きいほどモチベーションは向上します。

上記5点はそれぞれが相関関係にあります。同じ目標も「見せ方」によって姿形が大きく変化するため、どのような旗振りをするのか「リーダー」の腕の見せ所となります。

2.戦略的思考力

次にリーダーに求められる要素が「戦略的思考力」です。
あらゆる意思決定の局面でリーダーには「戦略的思考力」が問われます。

事業推進において、特にリーダーに戦略的思考が求められる局面は下記の3点です。

ーーーーー
①マーケティング戦略の設計時
②KPIの設計時
③ボトルネックの抽出時
ーーーーー

詳しくみていきます。

①マーケティング戦略の設計時
社内にCMOや該当領域のスペシャリストが不在の場合は、事業責任者であるチームリーダーがマーケティングの全体戦略を設計します。

マーケティングの戦略設計においては、フェーズが上流になればなるほど重要度が増します。上流で設定した戦略を土台として、その後のあらゆる戦略、戦術を設計するためです。場当たり的な戦略設計とならないよう、プロジェクトリーダーには高い戦略的思考能力が求められます。

②KPIの設計時
次に戦略的思考能力が問われる局面がKPIの設計時です。KPIを設計する際は、設定したKPIがKGIに紐づいている必要があります。KPIがKGIと紐づいていない場合、個々人の目標(KPI)達成が事業全体の目標(KGI)達成に紐づかなくなってしまうからです。最終ゴールを達成するためにはマイルストーンを適切に配置することが重要となるため、KPI設計者の戦略的思考能力が鍵となります。

③ボトルネックの抽出時
次にボトルネックの抽出時です。事業推進がハードルにぶつかった際、目の前の課題をクリアできるかどうかはボトルネックを正確に抽出できるか否かにかかっていると言っても過言ではありません。

ここでのポイントは、課題のボトルネックを上流フェーズから順に潰していくことです。

ここで陥りがちなミスは課題が発生しているフェーズのみに焦点を当ててしまう例です。

上記の図を活用して事例を一つご紹介します。

事業推進の進捗管理をしている中で「ディスプレイ広告からのCV数(KPI)が大きく未達になっている」というケースがありました。その事業の責任者は広告クリエイティブに課題があると断定し、広告代理店のリプレイスや運用媒体の変更を繰り返していました。しかしヒアリングの結果、設定していたターゲットのニーズと広告で訴求している便益がマッチしていないことが判明し、訴求軸を大きく転換した結果、CV数が3倍になったというケースがあります。

下流フェーズでの施策が不振なケースでは、マーケティングの上流フェーズにそもそものボトルネックが存在していたというケースは意外にも多く散見されます。こういった局面を乗り越えるためには、プロジェクトリーダーが戦略的な事業の実行指揮を執れていることが重要な要素であると断言できます。

3.業務遂行能力

次にリーダーに必要不可欠な要素となるのが「業務遂行能力」です。「PM理論」の「P=目標達成機能」における能力を指します。

大前提として、リーダーはチーム内で最も成果を出すことができる人材である必要があります。加えて、「一時的に圧倒的な成果を出す」のではなく「継続して一定のパフォーマンスを発揮する」ことが求められます。そうでなければ、あらゆる意思決定やマネジメントにおける「説得力」が欠けてしまうからです。そのために必要な要素は、

ーーーーーー
「業務遂行」においては、
できる限りの「感情」を排除し「合理的な判断」ができる精神力を培っておくこと
ーーーーーー

です。
パフォーマンスにムラが出てしまう主な原因は「感情の起伏」によるものがほとんどなので、「業務遂行」に個人的な感情が入り込む余地を消し切れない人材は「リーダーシップ」が高い人材であるとは言えないでしょう。ただし「M=集団維持機能」における業務においては、メンバーが抱えているストレスを感じとる「感受性」がチームの団結強化につながることもあります。リーダーとして全ての業務に「感情」を排除してしまうと人が離れてしまう要因になり得るため注意しましょう。

4.意思決定能力

次にリーダーに求められる要素が「意思決定能力」です。リーダーにはあらゆる局面でGo/No goの意思決定が求められます。理想的な状態としては、常日頃からリサーチを欠かさず、事業推進において発生するあらゆる意思決定の局面で即座に判断が下せることです。

しかしながら、予測不能な事態が突如として発生することは事業推進において定石です。時にどちらの判断が正解なのか全く検討がつかない状況下で決断を迫られるというケースは往々にして存在します。「リーダーシップ」の観点から見た際、このようなタイミングで重要なことは、

ーーーーー
自身が選んだ選択肢を「正解」だと信じ、
その選択肢をメンバーに「正解」だと信じさせること
ーーーーー

です。
リーダーが「不安」になれば必ずメンバーも「不安」になります。そうなれば勝てたはずの勝負にも勝つことができなくなります。「リーダーシップ」に求められる「意思決定能力」とは、「己の選択に自信を持ち、メンバー全員を引っ張っていくことができる能力である」と言い換えることができるでしょう。

5.情熱と冷徹さ

次にリーダーに求められる要素が「情熱と冷徹さ」です。この二つの要素は「リーダーシップ」を語る上ではどちらも欠かすことのできない絶対要素であると言えます。ここで言う「情熱」「冷徹さ」とは下記の要素を指します。

ーーーーー
情熱:絶対にやってやるという確固たる自信、思い、態度

冷徹さ:感情を一切排除した合理的かつ戦略的な判断能力
ーーーーー

よくある例が「情熱」に重心が傾き「冷徹さ」を欠いてしまうリーダーです。
「情熱」に重心が傾いているリーダーは魅力的に見えるため一緒に戦ってくれる仲間集めにはあまり困りません。しかし「冷徹さ」を欠いてしまうが故に視野が狭まってしまいがちで、周囲の客観的な意見が耳に入りづらくなってしまうことがよくあります。こうなると打ち立てた戦略や意思決定にどんどん固執してしまい、チームを不幸な結果に招いてしまう可能性が高まります。
逆に「冷徹さ」に重心が傾き「情熱」を欠いているリーダーの場合、仲間集めに苦労することがよくあります。一人で完結できるプロジェクトであれば問題ありませんが、チームを構築して牽引していく上ではリーダーのあくなき「情熱」がチームに及ぼす影響は甚大であると言わざるを得ないでしょう。

6.安定した精神力

次にリーダーに求められる要素が「安定した精神力」です。精神的に不安定な人材がリーダーに向かないという点において言及の余地はないと思います。「業務遂行能力」の項目では徹底的な合理性を貫くことができる精神力が大切であると述べましたが、ここで重要なポイントがもう一つあります。それは、

ーーーーー
リーダーも人間なのでスランプに陥るタイミングが訪れる
ーーーーー

ということです。
どんなに優秀な人材でもスランプが訪れる可能性を0にすることはできません。
では、スランプに陥ってしまったリーダーはどのようにすればいいでしょうか?
ここでリーダーに求められる重要なポイントは、

ーーーーー
スランプに陥ってもリーダーとしての姿勢を徹底すること
ーーーーー

です。
結果が出なくなったら即座にリーダー失格かと言うと、そうではありません。(もちろん中長期スパンで軌道に戻せなければ降格させる必要があります)リーダーの役割はあくまで「チームを目標達成に導くこと」です。極論ですが、リーダーが不調でもチームが好調であれば問題ありません。しかし、自身の結果にマインドを左右されてしまいリーダーが態度を崩してしまうと、チーム全体の空気が暗くなりチームパフォーマンスは急速に低下します。逆に、リーダーが不調を跳ね飛ばすマインドを貫き通すことは目標未達の人材に「不調時のあるべき態度・背中」を見せられるいい機会でもあります。本当の意味での「安定した精神力」とは「結果が出ないもやもやに飲み込まれない精神力」であると言うことができるでしょう。

7.コミュニケーション能力

次にリーダーに求められる要素が「コミュニケーション能力」です。ここでのコミュニケーション力とは「M=集団維持機能」におけるチームメンバーとのコミュニケーション能力を指し示します。メンバーとリーダー間の理想的な関係性は「メンバー自身が不安なこと、解決したい課題、悩み事をリーダーに自分から打ち明けられる関係性」です。逆に避けたい状態は「この人には何を言っても無駄だ」とメンバーから一線を引かれてしまう関係性だと言えます。違いは「信頼関係の有無」です。

では、日頃からどのようなコミュニケーションを意識すれば信頼関係を築けるのでしょうか?この点も様々な要素があるため絶対的な正解はありませんが、ここではポイントを5つご紹介します。

ーーーーーー
①挨拶、感謝、謝罪を言葉にする
②こちらから話しかける
③仕事に関しては厳しく接する
④同じ目線で目標を追いかける
⑤自身の失敗談を隠さず話す
ーーーーーー

【①挨拶、感謝、謝罪を言葉にする】
当たり前のことですが、挨拶や感謝、謝罪をしっかり言葉にすることは信頼関係を築く上で最も重要です。どんなに仕事ができるリーダーでも、この点を蔑ろにする人に対して「本当に相談したい悩み事」を相談することは困難です。

【②こちらから話しかける】
こちらから話しかけることも信頼関係を築く上では重要な要素です。特にメンバーがチームに馴染んでいない初期段階ではメンバーがチームに馴染めるようリーダーから働きかけましょう。またこちらから話しかけることで、メンバーは自身に興味を持ってくれていると感じます。興味を持って接してくれる人には本音を打ち明けやすいと言えるでしょう。

【③仕事に関しては厳しく接する】
仕事に関しては厳しく接するという点も非常に重要な要素です。仕事に甘いリーダーだと思われてしまうと「この人に話しても課題は解決しなさそう」とメンバーに思われてしまいます。リーダーとしてこの状態は最も避けなければならない状態です。仕事における信頼感を築くためには、ダメな所はしっかりと叱責することが重要です。

【④同じ目線で目標を追いかける】
メンバーとリーダーが同じ目線で目標を追いかけている状態は信頼関係を構築する上で重要なポイントです。日頃のマネジメントが「リーダー」→「メンバー」のベクトルになっている場合、メンバーは叱責や注意を恐れてミスをひた隠しがちです。一方「リーダー・メンバー」→「目標」のベクトルで日頃からコミュニケーションが取れていれば、「どうやってその課題を解決しようか」と同じ目線で課題解決に努められます。

【⑤自身の失敗談を隠さず話す】
メンバーがリーダーに最も打ち明けづらい悩み事は、リーダーやチームにとってネガティブな要素になる自身の悩み事です。例えば、キャリアの悩みや、仕事上でうまくいかないことなどが該当します。しかし、自身の失敗談を隠さずに話すことができるリーダーには「この人なら受け止めてくれるかもしれない」と感じ話を切り出しやすくなります。

それぞれのメンバーが何を考え、何を大切にしてそのチームで仕事をしているのか、これらをリーダーがしっかり把握できているチームは結束力が何十倍にも高まります。

8.未来をイメージさせる能力

次にリーダーに求められる要素が「未来をイメージさせる能力」です。
この「未来」は「チームの未来」と「個人の未来」の2つの要素を含みます。

チームの未来をイメージさせる能力に関しては「ワクワクできる目標設定」の項目で触れたので割愛します。
個人の未来をイメージさせる力に関しては「As is → To be」のマネジメント手法をご紹介しておきます。
ーーーーー
・As is:今の自分
・To be:なりたい自分
ーーーーー
小手先のテクニックですが、「この仕事で得られる経験で今と理想の乖離を埋められる」と感じさせることによって、仕事を行う目的意識を明確にしようとするマネジメント手法です。「なりたい自分とかは特にありません」という人に対しては、逆に「ネガティブな未来を想像させる」という手法が取られることが多いです。これは「理想を追求したい」より「危機を回避したい」というネガティブな力の方が人を突き動かす力が強いためです。

しかしながら、このような小手先のテクニックばかりを有難がって駆使しようとするリーダーをどのくらいの人が魅力的だと感じるかは想像に難くないでしょう。詰まるところ、「リーダーシップ」において大切なのは「リーダーがどのくらい明確に、強烈に、チームや自身のビジョンを描いているのか?」です。リーダーが強烈なビジョン探究をしていれば、チームのメンバーは勝手にチームの未来、またはリーダー自身の未来に感化されて自身の未来を描き始めます。

リーダーシップの類型【3選】

この章ではドイツ出身の心理学者クルト・レヴィン博士によるリーダーシップにおける3類型をご紹介します。
この類型に即してリーダーシップを捉えることで人材選定の解像度を上げることができます。チームや組織の状況、または目的に即してリーダーを選ぶ際のご参考にしてください。

1.専制型リーダー

専制型リーダーとはいわゆる「ワンマンリーダー」です。メンバーの主体性、自主性は一切排除し、全ての意思決定、行動選択がリーダーの一存に委ねられています。

ーーーーーー
▼メリット
・短期的な結果を最も出しやすい

▼デメリット
・中長期的なチームの成長は見込めない
・チームパフォーマンスはリーダーのスキルがキャップとなり頭打ちになる
ーーーーーー

→緊急で結果を出さなけれならない状況下で有効

2.民主型リーダー

民主型リーダーは「相談役」のイメージです。基本的にはメンバー間での話し合いを尊重し、リーダーは基本的にサポートに徹し、作業手順などの意思決定までメンバー間で行います。

ーーーーー
▼メリット
・中長期的なチームの成長が見込める
・メンバーの自主性・能動性を引き出せる

▼デメリット
・短期的な結果はあまり望めない
ーーーーーー

→中長期的にチームの成長を促したいときに有効

3.放任型リーダー

放任型リーダーは一言で言えばチームに「一切関与しないリーダー」です。あらゆる意思決定、作業手順や戦術策定にも一切口を挟まず、チームの成り行きを黙って見ているという状態のリーダーです。

ーーーーーー
▼メリット
・メンバーが自由に行動できる

▼デメリット
・成果がメンバーのスキルセットに依存する
・チームパフォーマンスは基本的に平行線となる
ーーーーーー

→専門性の高いプロ集団において有効

リーダーの選び方〜目的別〜【11選】

この章では必要に応じて上記の3類型を活用し、事業推進における目的ごとに適切なリーダーを選ぶ際の考え方を紐解いていきます。また「リーダーシップが求められる状況」=「目標達成が求められている状況」と定義し、「短期目標」「中期目標」「長期目標」の3つの観点で「どのような特徴を持つリーダーを選べばいいのか?」に焦点を当ててご紹介します。

〜短期目標〜

1.事業の存続を守り抜きたい

最も強烈なリーダーシップが求められるのが「事業の存続を守り抜かなければならない」ケースです。この状況下で必要とされるリーダーは「専制型リーダーシップ」を得意とするリーダーになります。リソースを最大限に活用した結果として事業存続が危ぶまれているというケースでは、強烈なリーダーシップを持って抜本的な組織改革を推し進めていける力のあるリーダーを必要としている状態だと言うことができます。
(※現在の事業形態を保ったまま上流のマーケティング戦略を変えるだけで事業の立て直しが行える場合もあります)

ここで注意が必要なのは、新たな人材を外部から招き入れる場合、しっかりと既存メンバーとのコミュニケーションが取れる人材であるかをアサイン前にチェックしなければならないという点です。「専制型リーダー」 = 「傍若無人な人材」ではありません。組織及びチームの現状把握、リソースの質と量、メンバーのケイパビリティなどを踏まえた組織改革を推し進められる人材か否かをしっかりと見極めましょう。

2.期限までに必ず目標を達成したい

次に「期限までに必ず目標を達成したい」というケースです。これは期限までにどのくらいの猶予があるのかにもよりますが、緊急を要する場合はやはり「専制型リーダーシップ」を得意とした人材が効果的です。このような場合に求められる人材は、効果が現れるまで時間を要する上流戦略設計に特化した人材ではなく、自社と類似した市場領域において最前線で稼働している顧客とのタッチポイントに強みのあるリーダーを選定することが鍵となります。

3.人員の抜けを今すぐカバーしたい

次に「人員の抜けを今すぐカバーしたい」というケースです。このような場合は上記の3類型ではなく、穴のあいたポジションで発生する業務内容に焦点を当てて人材を選定する必要があります。特にリーダー格である「事業責任者」や現場を取りまとめる「ディレクター」クラスの人材であれば、業界における精通度、様々な施策における経験値、チームマネジメントにおける経験値、などメンバーを取りまとめて即座に成果を出せる人材であるかどうかをアサイン前に見極める必要があります。

上記のポイントからも、短期的な目標達成においては「専制型リーダーシップ」を得意とするリーダーを選出することで効果的であることが分かります。

〜中期目標〜

4.業務を効率化したい

「業務を効率化したい」という場合、「民主型リーダーシップ」を得意とするリーダーが効果的です。外部人材が業務フローの整理に着手する場合、どのような仕組みを作ればメンバーの仕事が捗るのか、メンバーのケイパビリティや組織の特徴を把握しておくことが重要なポイントになるからです。一見業務が効率化されたようで、運用してみたら組織に馴染まず労力とコストだけが無駄になってしまうというようなケースはよく発生します。例としては、BtoB企業で顧客ごとに折衝した際の情報を見やすく管理できていなかったためSFAツールを導入したが全く使いこなせなかった、、、というようなケースです。メンバーとのコミュニケーションから課題を抽出するスキル、課題点に言及し周囲を巻き込んで変革を推し進められるスキル、が必要な要素になります。

5.組織を一枚岩にしたい

次に「組織を一枚岩にしたい」というケースです。これは「上下左右の連携が取れていない」ことで組織運営がうまく機能していない状態です。具体的には「経営陣と現場のブリッジ役となれる人材がおらず、経営方針を現場にうまく落とし込めない、また現場から経営陣への提言ができない。部署間を横断して統括できる人材がおらず、各部署が分断されて有機的に機能していない。」といった例が挙げられます。このような場合に求められる要素は、
・組織全体を俯瞰できる高い視座
・円滑な事業運営を妨げているボトルネックを抽出する課題抽出能力
・不必要な忖度を排除した合理的なコミュニケーション能力
・業界への精通度
・事業推進における実績
など、事業責任者レベルの人材の中から自社の領域に精通した人材をリーダーとして迎え入れる必要があります。
3類型の要素では「民主性・専制性」共にバランスよく兼ね備えた人材が必要になります。

6.事業を大きく転換したい

次に「事業を大きく転換したい」というケースです。事業をピボットさせる上で最も必要な要素は「事前準備」になります。事前の市場調査、消費者理解、事業インパクトの効果測定における”精度”が事業の成功をダイレクトに左右する重要な要素です。このような場合に求められるスキルは、上流戦略設計に伴うマーケティングリサーチ能力です。これから事業転換を検討しているという場合は、最高マーケティング責任者クラスの人材をリーダーとして迎え入れると良いでしょう。現状路線のまま事業を伸ばしていきたいという場合は、事業責任者クラスの人材が適しています。その市場領域におけるスキルセットが未熟なメンバーが多いチームであれば、その領域のプロフェッショナル人材の中から「専制型リーダーシップ」を得意とするリーダーを選出すると良いでしょう。事業が軌道に乗るまではリーダーが施策の運用手順まで全ての意思決定を行い、事業の成長に合わせてメンバーの中長期的な育成に重点を置いた「民主型リーダーシップ」が発揮できるリーダーであれば理想的です。

7.個々人のスキルアップを図りたい

次に「個々人のスキルアップを図りたい」というケースです。このような場合、メンバーの目標を一緒になって設定できる「リーダー」が求められます。3類型の中ではメンバーに意思決定させるためのサポートが得意な「民主型リーダーシップ」を持ったリーダーです。スキルアップを行う上でリーダーに求められる重要な要素は、設定する目標の「難易度調整」です。高すぎる目標は自信を削ぐ要因に、低すぎる目標はモチベーションを削ぐ原因になり得ます。6〜7割達成できて、3〜4割は達成できない、くらいの難易度が理想的です。特に初期段階ではいきなり成果の数値に結びつく目標設定でなくても構いません。「まずは5人のお客さまに笑ってもらう」など1歩1歩前に進んでいるという感覚を掴める目標設定を心がけましょう。

中期的な目標達成においてはその局面によって「民主型リーダーシップ」も「専制型リーダーシップ」も共に求められるケースが多くあります。

〜長期目標〜

8.新たな提供価値を見つけたい

次に「新たな提供価値を見つけたい」というケースです。新たな価値創造をする上では組織全体の「MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)」から逆算した戦略設計ができる上流層の「リーダー」が必要です。新たな価値創造をする際は「ミッション」と「事業内容」を区分けして捉え、「ミッション達成」を基軸に違うアプローチを取ることができないか戦略を練ることが重要なポイントになります。一例として、株式会社ビジョナリーを見てみましょう。「介護で悩まなくていい世の中を」を「ミッション」とし、「介護福祉施設運営」を「事業内容」として事業展開をしている企業です。当企業は介護業界の人材不足を解消すべく「マッチョばかりの介護施設運営」という新たな戦略を打ち出し、マッチョな人材に業務時間内でジムを利用できる環境を提供することで人材を集めることに成功しました。これは「利用者の安心安全 × 業界の人材不足」という「介護の悩みを解消する」ことに新たなアプローチで成功した例だと言えます。このような例からも、新たな価値創造をする上では「MVV」から逆算した戦略設計ができる上流層の「リーダー」が必要だということができます。

9.組織をインハウス化したい

次に「組織をインハウス化したい」というケースです。インハウス化とは「支援企業の力を借りずに自社リソースのみで勝負する」といった状態です。近年では多くの企業が外部リソースに依存しない組織作りを目指して「インハウス化」へのシフトチェンジを行っています。インハウス化を実現するには、これまで外部のプロフェッショナルに委託していた業務を自社リソースで補えるよう社内教育に力を入れなければなりません。その過程において、組織構築のプロフェッショナルを事業責任者としてアサインし、プロジェクト推進を行いながら組織にスキルを移譲していくことで「チームの自走化」を図るといった取り組みに注力する企業が増えてきました。

このようなケースでは「専制型(初期)」→「民主型(中期)」→「放任型(長期)」の順で、「自走化」から逆算した事業推進ができる人材を選出する必要があります。それに伴う業務としては、使用するフォーマットの標準化、コミュニケーションフローの定点化、KPI設計などPDCAの可視化、などが当たります。「どのような組織作りをすればリーダーなしでもチームが回るのか?」事業推進のベース作りができる人材を選出する際は、選出するリーダーが過去に手掛けた事業がリーダー退任後に業績を落とさず継続しているか否かに着目すると良いでしょう。

10.リソースを最適化したい

次にリソースを最適化したいというケースです。この項目ではチーム内のリソースを最適化するケースで見ていきます。(組織全体のリソースを最適化する際のリーダー選出については後述します)このような場合、過去に事業責任者として自社と類似する市場領域で結果を出してきたプロジェクトマネージャークラスの人材を「チームリーダー」としてアサインするのが効果的です。

ここで着目すべきポイントは「事業ステージ」です。事業推進において発生する業務の優先順位は「その事業が今どのステージにあるのか」で大きく変わります。例えば、自社の事業がPMF(プロダクトマーケットフィット)前の段階であるならDRM(ダイレクトレスポンスマーケティング)などリードタイムの短い施策に、ある程度軌道に乗っている段階の場合、市場シェアを拡大していくようなマスマーケティング戦略や獲得した顧客がチャーンをしないように提供価値の品質向上などの施策に注力する必要がありますが、それぞれの施策に求められるケイパビリティは全く異なります。よって、リーダーを選出する際は、そのリーダーが「どの事業ステージにある事業をどこまで伸ばしたのか?」に着目することがポイントです。自社の事業ステージと同程度の事業ステージから責任者を担っていた人材を自社にアサインすることができれば、即戦力としてチームを引っ張っていける可能性が高まります。

11.組織構造を変革したい

最後に、組織構造を変革したいという場合です。組織全体のリソースを再配分するタイミングは「事業単位での選択と集中」もしくは「部署単位での選択と集中」を迫られているタイミングであると考えられます。このような場合に必要となるリーダーは、組織内リソースと市場全体を俯瞰した上で最適な事業選択・リソース配分ができる最高マーケティング責任者クラスの人材です。近年におけるデジタル技術の発達で「顧客主導型のマーケット」に市場は大きく変化しました。それに伴い、より顧客ニーズから逆算されたマーケティングドリブンな組織構築を推し進める企業が競合を圧倒しています。(詳しくはこちらをご覧ください「CMOとは」)ダイナミックな組織転換は時間とコストがかかりますが、現代市場においては結果の跳ね返りスピードもみるみる加速しているためより早く組織転換に着手した企業がより多くのパイを獲得できると言っても過言ではありません。

このようなケースでリーダーを選出するポイントは「市場領域」です。事業選択や部署配置は市場構造や消費者心理をより深く理解している人材が執り行うことでよりスピーディーに効果を最大化することができます。新たなリーダーを外部からアサインする際は、その人材がこれまでどのような市場領域で成果を上げてきた人材なのかを見極めると良いでしょう。

リーダーにマーケターをオススメする理由【3選】

最後に、我々がプロジェクトリーダーに「マーケター」を勧める理由を3点ご紹介します。

1.戦略設計の精度が上がる

一つ目が「戦略設計の精度が上がる」という点です。
記事全体を通して「リーダーの役割」=「チームを目標達成に導くこと」だとお伝えしてきました。「戦略設計における精度の高さ」はチームを目標達成に導く上で欠かせない第一の要素だと言えます。

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・なぜそのターゲットなのか
・なぜそのポジショニングなのか
・なぜその価値提供なのか
・なぜその目標設定なのか
・なぜそのマーケティングフローなのか
・なぜその人員配置なのか
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「市場規模・競合数・消費者理解・自社理解」など市場や顧客から逆算されたマーケットインの思考で上記の「裏付け」が取れているか否かが事業成功の再現性を高める重要なポイントです。チームリーダーが上記の点を踏まえた事業推進を執り行うことができれば、目標達成における再現性は格段に跳ね上がります。

2.課題解決の精度が上がる

二つ目が「課題解決の精度が上がる」という点です。
事業推進において最も注力が必要な問題は「目標未達」です。「全体目標」然り「個人目標」然り、数字が達成できていない限りは常に改善が必要な状況であると言えます。目標未達の問題を解決する際に重要なポイントは「ボトルネックをどこから潰していくのか?」です。正しい順序としては戦略→戦術の順に顧客ニーズとのズレがないかを潰していきます。

この点に関しては、それぞれの担当部署によってソリューション選定における得意分野が異なります。

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▼ソリューション選定におけるマーケターとセールスの視点例

マーケター:ターゲット選定、顧客ニーズ、提供価値、など(戦略フェーズ)
セールス:トーク内容、アプローチ時間、アプローチ相手、など(戦術フェーズ)
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そもそもの戦略がズレている場合、戦術における試行錯誤はその場限りの対処療法になってしまう可能性が高まります。チーム全体を俯瞰した事業推進が求められる「チームリーダー」には、全体戦略から逆算した課題解決能力が求められると言うことができます。

3.マーケティングリサーチから逆算した組織配置ができる

最後に「マーケティングリサーチから逆算した組織配置ができる」と言う点です。
リーダーの役割において目標達成に最も影響を及ぼす業務は「組織配置」であると言えます。「人員配置=事業推進の基盤構築」そのものだからです。

サービスローンチ前のマーケティングリサーチに携わった人材がその後の事業推進における「チームリーダー」として稼働することができれば、広告テストやパッケージテストでの効果測定結果を元に適切なケイパビリティを持った人員配置をすることが可能です。事前のミックステストに沿った組織の構築ができれば施策における再現性は当然上がります。すでに推進している事業に新たなリーダーをアサインする場合でも、事前リサーチにおける理解がスムーズに行えるマーケターであれば設計したロードマップに沿った事業推進を行える可能性が上がり、事業成功の再現性を高められると言うことができるでしょう。

まとめ

今回の記事では、
「リーダーシップの定義」
「リーダーの役割」
「リーダーの要素」
「リーダーシップの類型」
「リーダーの選び方〜目的別〜」
「リーダーにマーケターをお勧めする理由」
について解説をしてきましたが、いかがでしたか?

下記に体系的なリーダーシップの研究結果をご紹介しておきます。
当記事ではより現場で成果を出しているリーダーシップに焦点を当てて記述していますので、下記と併せて人材選定の際のご参考にしていただければと思います。

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2種類のリーダーシップ
・P理論
・M理論
提唱:三隅二不二(元九州大学教授、大阪大学名誉教授、筑紫女学園大学・短期大学元学長。財団法人集団力学研究所初代所長)

3種類のリーダーシップ
・専制型リーダーシップ
・民主型リーダーシップ
・放任型リーダーシップ」
提唱:クルト・レヴィン(ドイツの心理学者。専門は社会心理学、産業・組織心理学、応用心理学)

6つのリーダーシップ
・ビジョン型リーダーシップ
・コーチ型リーダーシップ
・関係重視型リーダーシップ
・民主型リーダーシップ
・ペースセッター型リーダーシップ
・強制型リーダーシップ
提唱:ダニエル・ゴールマン(アメリカの心理学者、科学ジャーナリスト)
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