マーケティングのインハウス化について
2023/01/12
Contents
導入
マーケティングをインハウスで実施していくべきなのか、広告代理店へアウトソーシングすべきなのかという議論を度々耳にします。本記事では、一般的な論調で目にするメリット・デメリットのような二項対立ではなく、インハウスでしかできないことや、広告代理店へのアウトソーシングでは解決できない事項について触れていきます。
マーケティングのインハウス化を希望する企業側の主張
まず、大前提として弊社ではマーケティングを以下と定義しています。
【持続可能な成長を実現し、価値を創造•提供すること】
しかし、世間一般で言われているマーケティングのインハウス化というのは、マーケティング=プロモーションであり、プロモーション機能を広告代理店にアウトソーシングせずに、インハウスで実行していくことを指す場合が主となっています。では、なぜ企業側がプロモーション活動のインハウス化を希望する実態が増えているのでしょうか。
マージン問題
今まで受けてきた相談先企業の傾向上、マージン(手数料)がまずはきっかけとなることが多いです。事業を運営している企業としてはできるだけ少ない投下コストで最大のパフォーマンスを出したいのが本音です。しかし、プロモーション活動を広告代理店にアウトソーシングすると予算が拡大するに連れて、広告代理店側への手数料も増えていく座組みとなっていることが主だと思います。(業界慣習としては使用広告予算の20%が広告代理店の利益)広告代理店の目線で考えた時には広告予算の増額=広告代理店の利益増加である一方、前述したように事業主視点で見るとマージン額が上がっていくことは、間接コストが増加するため懸念を持たざるを得なくなってしまいます。このように企業の目論見と広告代理店のビジネスモデルは根本的に利益相反の構造になっている現状があります。中小規模の企業の場合、月の広告予算が500万円を超え出した辺りから検討を視野に入れ始める企業が増えて1,000万円/月を超え始めると一気にプロモーションのインハウス化に舵を切る傾向が見受けられます。広告代理店への手数料を加味すると社員で採用した方がメリットがあると思い始めるラインの線引きになります。
広告代理店への不満
マージン問題は表層化しやすく分かりやすい問題ですが、本質的な事業者のインサイトには広告代理店への不満がプロモーションのインハウス化に切り替わる原因となります。
ケースとしては例えば、
-PDCAの改善が遅い。
-新人が担当したり、担当がコロコロ変わる。
-ミスや出戻りの確認が多い。
-提案がない。
-指示待ちになっている。
-事業者の顧客に関する理解が浅い。
-コミュニケーションの齟齬が頻発する。
結果が出ないのは広告代理店側の問題?
プロモーションを委託している事業主側としては結果が出ていない場合は、マーケティングの問題を広告代理店サイドに要求してしまいがちです。しかし、残念ながら国内の広告代理店のほとんどはプロモーション手法のスペシャリスト組織である一方、マーケティングのスペシャリスト集団ではないのです。冒頭でも前述したように、マーケティングの本質は、持続可能な成長を実現し、価値を創造•提供することだと弊社では考えています。その企業の成長を支えるうえで、プロモーションの工程に入る以前の問題点があるにも関わらず、実態としては下記のような状態が散見されます。
マーケティングとは=プロモーション活動であり=結果が出ないのは広告に原因があると断定=広告代理店に問題がある=広告代理店側も解決策が取れない or 分からず
持続可能な成長を実現するうえでは、プロモーションの範囲だけでなく、サービスの設計、サービス改善、プライシング、流通、タッチポイント、顧客理解、ブランド設計、UI/UX、CRM、キャッシュフロー、採用、などいくつもの変数の総合力が重要となります。マーケティングは、【なぜ】その企業が提供し【何を】便益として【誰に】使っていただくために【どのように】届けるのかを追求し続けていく必要があります。これらが明確な解像度で存在し、一定の効果が見はじめてきた状況こそがマーケティングにおける勝ち筋の構築へと繋がっていくのです。しかし、マーケティング=プロモーションのみに課題を限定してしまうことで、【どのように】の最後の工程のみにしか視点が行き届かず、広告代理店へ問い正してもリプレイスをしても結果が伴わない場合は事業者側のマーケティングにおける改善視点の不足と、広告代理店が役務提供できる範囲の狭さにあります。(※広告代理店のビジネスモデル上、仕方がない部分はありつつも、マーケティング=プロモーションというような誤認識を作って収益をあげていた広告業界全体としての反省が必要です。)
広告のインハウス化を検討すべき企業は?
結論としては、事業自体の勝ち筋が明確になっており、それが既にPMF(マーケットで証明)されている企業です。勝ち筋が明確でない状態であれば、インハウスで実行するにしてもアウトソーシングをするにしても及ぼす結果に差異はそこまで生じません。また、ビジネスモデル上、広告プロモーションの投下による発生CV=即座に売上へと繋がるようなモデル(代表例としてECで物販を行なっている企業など)は、広告代理店にプロモーションをアウトソーシングしても上手くいくケースが考えられます。しかし、CVしてから来店に繋がるようなモデルや、BtoBビジネスに代表される実際の売上に繋がるのはCV後の工程で、営業が受注できた場合に売上が発生するビジネスモデルなどは、インハウス化していかなければ中々成果に繋がることが難しいのが現実です。
例として、BtoB(SaaSサービスを提供している)企業をピックアップします。繰り返し触れているように、広告代理店側の役務のメインは【どのように】届けるのかをメインに行なっており、CV発生までが関与の限界となります。仮に問合せが月に30件を獲得する目標を広告代理店側がミッションとして受けもった場合、CVが30件発生できれば広告代理店は目標はクリアしているのです。しかし、実際にはそもそもCVが30件発生したとしてもその30件の内、次の変数として、どのようなニーズの顧客であったのか、自社の見込み顧客であったのか、いつ頃見込みになりそうなのか、営業歩留まり(何割受注できたのか)、なぜその企業を選んで頂けたのか、利益(LTV)はいくらなのかなどの変数を追いかけることが広告代理店側ではできません。それらを把握するためには事業主サイドにいる現場の方々や実際の顧客と対応しているセールスの人との細かい連携がマストになります。そこから、見込み化しやすいターゲットの特徴を実際の現場の声とデータをもとに洗い出し、プロモーションに反映することで広告効果が最大化されます。しかし、このような深い取り組みはやはり広告代理店のビジネスモデル上、難しい場合が多いためインハウス化していくことを推奨します。
インハウス化の懸念点
①導入前の課題:採用自体ができない。
そもそも、自社の課題を特定しそれらを解決できるマーケターを採用できないケースの方が多いです。採用は選択肢の1つにしかすぎないのですが、正社員採用に固執しすぎた結果、課題が放置され続けてしまうという事態を引き起こしかねません。課題の放置は企業の成長を妨げる要因になるため、最も危惧すべき事です。しかし、実際のよくあるシチュエーションとしては、決められた採用フォーマットにマーケ部門が採用予定人材の条件を記述後、人事に採用を丸投げし、人事側も市場で中々出会えないマーケターを見つけようと翻弄するも、結局は人事側もマーケターの市況感やスキルセットが分からず、採用に苦戦する場合が多く見受けられます。
②導入後の課題:課題の特定を誤った状態で採用を行う。
残念ながら大多数の企業は目下発生した問題点をマーケティングにおける重要課題と誤認し、断定しがちです。前段で述べた通り、プロモーション手法の変更は分かりやすい対策手段であるため意識がいきがちですが、広告以前の【マーケティング課題】が未解決になっていることがほとんどです。そのような状況で仮にWebマーケターをインハウス採用しても本人の強みやスキルが活かせずミスマッチとなるケースがあります。また、事業フェーズが変わった時などにおいて、その方を最大限活かせるかどうかは不明瞭なため、スペシャリストの採用は判断が難しいです。
新たな選択肢であるマーケターの業務委託活用
これらの問題点を踏まえて業務委託でマーケターを採用する方法も近年では増えてきています。課題を特定し、そのプロジェクトのフェーズに合わせた人員リソースを補強していくことで、各種問題点と課題を解決していきます。また、フェーズが変わった際には別のリソースとチェンジをする事が可能なため、有効な選択肢になり得る可能性が高いです。業務委託の特性として、座組自体が広告代理店のように外部から一部プロモーション機能をアウトソーシングする形式でもないため、より組織に近い状況でマーケティング課題の解決に取り組むことが可能となります。
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